今日、3月26日からは七十二候の桜始開(さくらはじめてひらく)です。
今年は3月17日に第一声の桜の開花宣言が発表され、ここ横浜でも19日に開花が始まりました。
17日に開花宣言された東京では24日に満開になったと発表がありました。
例年よりも10日ほど早いそうです。
ニュースで桜の開花予報を報道したり、開花するといち早くお知らせしたり、満開発表があったり。
日本人は、どうしてこんなにも桜を愛でるのでしょうか。
何しろ「古事記」には桜の花の象徴といわれている此花佐久夜毘売(このはなさくやひめ)という女神様がでてきます。
在原業平は、
世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
と桜を愛でるあまり、春の恨めしさを詠みます。
兼好法師は、
願わくば花のもとにて春死なんむ
その如月の望月のころ
と最期をのときを桜の下でと願います。
太閤秀吉は醍醐の花見を盛大に催しました。
お江戸の長屋の熊さん、八つぁんもお弁当を持ってお花見にくりだします。
奈良の大神(おおみわ)神社では4月18日に疫病除けのお祭りをします。
大宝律令(701年)に国家の祭祀として定められたものだそうです。
花びらが散るときに疫病が分散して流行病をおこすと考え、これを鎮めるために行われたとか。
おりしも春の流行病の時期と重なります。風疹、はしか、おたふくかぜ、水ぼうそう・・・
桜は美しく日本人の心を魅了するとともに、美しいゆえの恐ろしさを感じていたのでしょうか。
桜の木の下に・・・埋まっているものは・・・
と、つらつらとつづった2000年にわたりこの国の人々に愛でられてきた桜は、現在私たちが脳裏に浮かべる葉の出る前に花だけが満開になるソメイヨシノではなく、花とともに葉も出るヤマザクラ、オオシマザクラなどの古くからの自生種です。
ソメイヨシノは明治初期に染井村(東京都豊島区)で交雑してできた園芸品種です。
さて、少しは漢方的なお話を。
梅の実、桃の種は漢方薬にありますが、桜はどうでしょうか。
桜は樹皮を「桜皮(おうひ)」といい、湿疹、蕁麻疹、腫れものなどの皮膚病、せき止め、解熱薬として、日本の民間療法で使われていたそうです。
「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」という漢方薬には、明の時代の漢方薬をもとに江戸時代の外科医華岡青洲が作った漢方薬です。
この中に桜皮が含まれています。
そして現代。
少し前まで、病院で出るせき止め薬に桜皮エキスが含まれるブロチン液というものがありました。
今は他の名前(サリパラ液)で販売されてはいますが、ヤマザクラの樹皮の調達が難しく、他の医薬品への代替がすすんでいます。
連綿と愛されてきた桜で病気が治るというのも素敵ですね。