8月の
五行学説のお話の中で、あらゆるものを5つに分けるとお伝えしましたが、味も5つに分けて考えます。
木火土金水(もっ・か・ど・こん・すい)に対応する五味は酸苦甘辛鹹(さん・く・かん・しん・かん)で、鹹は塩辛いという意味です。
日常的に使う食材や漢方薬に使われる生薬は味を5つに分類します。
例えば食材としても、生薬としても使われる生姜(食材としてはしょうが、生薬としてはショウキョウと言います)は、薬膳の本には【温/辛/肺脾胃】と表記されています。
これは、体を温めて五味の辛味という性質を持ち、主に肺(呼吸器系)や脾胃(消化器系)に働きかけることを表しています。
生姜は五味の辛味でしたが、陳皮(温州ミカンの皮)は辛苦、桂皮(シナモン)は辛甘など、違った性質を併せ持つものもあります。
では、五味とはどんな性質を持っているのでしょうか。
五味はその文字の示す味でもありますが、必ずしもその味でなくても、それぞれの持つ性質が含まれます。
酸味には:
収斂(しゅうれん/引き締める)や固渋(こじゅう/固めて滞らせる)の性質があり止血、止咳、止瀉、止汗などの働きがあります。
木に対応する肝(かん)に働きかけて気の流れを良くします。
例えば、みかん、レモン、キウイ、梅、トマト、酢などです。
苦味には:
吐き出させる、尿を出させる、湿(体の余分な水分)を出させる性質があり体を乾かす、熱を冷ます、毒(有害なもの)を体外に出すなどの働きがあります。
火に対応する心(しん)に働きかけ、心の熱を冷まします。
例えば、ゴーヤ、せり、ごぼう、菊花、セロリ、緑茶、コーヒーなどがあります。
甘味には:
気や血を補う、留める、脾胃を整える、けいれんを和らげるなどの性質があり安神作用と言って、不安を和らげたり睡眠の改善にも働きます。
土に対応する脾(ひ)に働き掛かけて消化器系の働きを良くします。
例えば、米、ハト麦、芋類、豆類、カボチャ、なつめ、チンゲン菜、鶏肉などがあります。
辛味には:
邪気を散らし、気血の流れを促すという性質があり風邪を引きそうなときに、風邪の邪気を追い払う働きをします。金に対応する肺(はい)に働きかけます。
例えば、生姜、紫蘇、長ネギ、玉ねぎ、にんにく、ニラなどがあります。
鹹味には:
軟堅(なんけん)という性質があり、しこりや便を柔らかくして排便を促す働きがあります。
水に対応する腎(じん)に働きかけます。
例えば魚介類、海藻類、しょうゆ、みそ、塩などがあります。
このような味と働きの関連性がわかると、体調に合わせたり五行の季節に対応させて食材選びをすることができます。
しかし、甘味にある「気を補う」からといって「甘~いもの」を食べ過ぎないでくださいね。
特に、ケーキやチョコレートは糖分+動物性脂肪ですので、頻繁に摂ることはお勧めできませんし、いくら良いものでも、ばっかり食べは禁物です。
食事はバランスよく食べましょう。
古来、「五穀は養をなし、五果は所をなし、五畜は益をなし、五菜は充をなす」(黄帝内経 素問)といわれます。