ある日突然に治療法の確立されていない病や原因不明の不調に襲われたら、人はどんなにか心細く、不安や恐れに苛まれることでしょう。
6月に入りコロナワクチン接種が進んでいますが、ワクチンだけでは不安を感じられる方もおられることでしょう。不安を抱える皆様のお役に立てばと思い、漢方の知恵をお伝えいたします。
人類の歴史は病との闘いの歴史ともいえます。中国では西暦1800年頃までに強い感染症(コレラやペストなど)を経験し、近年ではサーズやマーズなどの感染症と闘ってきました。その中で懸命な医療的試行錯誤と臨床経験が構築され続けています。中国数千年の歴史の中で体系化された漢方医療は、現在でも人の自然治癒力を助けるものとして利用されています。
漢方薬はその働きにおいて大きく2つに分かれます。
1つは身体に不足しているエネルギーや栄養物質を補う働き、
もう1つは身体に不要なもの(老廃物や細菌、ウイルスなど)を身体の外へ排出する働きです。
漢方薬として有名な葛根湯(カッコントウ)は身体の外からやって来て身体の表面に取り付いた外敵(外邪)を追い払うクスリの1つです。この場合の外敵とは、ただの感冒の他、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などもひとくくりとした風邪(ふうじゃ)とよばれる外邪のことです。
風邪は身体の防御力が弱ったスキをついて表面から内側へと入り込み咳や嘔吐、下痢などいろいろな症状を引き起こします。そこで風邪に対しては、体の内側へ入り込まないうちに先手先手で対応することが大切です。「なんだか風邪をひきそうだ。ゾクゾ寒気がする」そんなタイミングを捉えて風邪が内側へと入り込まないうちに追い払う漢方薬を一服します。残念ながら間に合わず入り込まれてしまった場合には症状に合わせて別の漢方薬を使います。
普段から外敵と闘う力を高める漢方薬で予防し、外敵を追い払う漢方薬はタイミング良く飲めるように持ち歩くと安心です。
漢方の知恵が今、出口の見えない暗いトンネルの中にいるように感じている方のお役に立てばと心から願っております。